コールセンター人材派遣の選択肢|派遣元・派遣先・派遣社員の視点で考える

多くの業界で活用が進む人材派遣サービスですが、コールセンターの運営にも人材派遣は欠かせない存在です。

しかし、コールセンターの人材派遣にどのようなポジショニングの会社が存在して、どこからどこに人材が提供されているのか、そして、どういう関係でお互いのビジネスが成り立っているのかをご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ここでは、そのコールセンター人材派遣の全体像を俯瞰するとともに、いろんな立場から見た人材派遣会社の選択肢(メリット・デメリット)について整理します。

以下に、コールセンター人材派遣の全体像を表わす図を用意しました。


人材派遣

この図を見ると、コールセンターの人材派遣と言っても、人材を提供する側/される側の違いや、業界・業種の幅などに違いがあることがわかります。

このように、いろんな違いがあるにも関わらず、それらを区別することなく「コールセンターの人材派遣」というワードでひとくくりにしてしまっているのが、この業界の実状なのではないでしょうか。

そこで、コールセンター派遣の生態系について、それぞれの立場・視点からじっくりとコールセンター業界を眺めてみます。人材派遣には、「派遣元」と「派遣先」があります。派遣元とは、人材(派遣社員)を提供する側。派遣先とは、人材を受け入れる側です。

● コールセンター人材派遣の「派遣元」の違いについて考えてみる

まずは、派遣元の違いについて考えてみましょう。

コールセンターに人材を派遣する派遣元は、大別すると次の3つがあります。

【1】 一般的な人材派遣会社(大手人材派遣会社)
【2】 コールセンター業界に特化した人材派遣会社
【3】 コールセンター運営会社

これらの違いについて、ひとつずつ見ていきます。

【1】 一般的な派遣会社(大手人材派遣会社)

多様な業界・業種への人材派遣をビジネスとする会社です。人材派遣の登録者数のボリュームが多いため、人材の供給能力が高いことは間違いありません。しかし、一般的な派遣会社にとって、コールセンター運営会社は数多くの営業先の一つに過ぎず、コールセンター業界に特化しているわけではありません。そのため、コールセンター向けの特別な付加価値を期待することはできませんし、いくら応募人数が多くても、その人達がコールセンターで働くために相応しい人材なのかをうまくチェックできているのかはわかりません。

【2】 コールセンター業界に特化した人材派遣会社

コールセンター業界に的を絞った人材派遣会社です。ただし、コールセンターの運営事業は営んでいません。また、大手人材派遣会社と比べて、会社の規模は大きくありません。コールセンター業界というセグメントに特化することで、大手人材派遣会社と差別化を図ろうとするニッチ戦略を取る会社です。同じ業界内での取引先(コールセンター運営会社)を増やすことで、人材採用や教育などの費用に「規模の経済」が働きコストメリットが生まれます。

ただし、顧客企業から見て、「大手人材派遣会社」と「コールセンター特化型の人材派遣会社」の差別化に本当に価値を見出せるのかどうかは、評価が難しいところです。

【3】 コールセンター運営会社

コールセンター運営会社では、送り出す側の「人材派遣」と、受け入れる側としての「人材派遣」がありますが、ここでは派遣元として人材を送り出す側について述べます。

コールセンター運営会社が派遣社員を派遣する先は、①一般企業の場合と、②同じ業界内(コールセンター運営会社)の他社の場合があります。コールセンター運営会社とは言っても、人材派遣サービスに限れば、コールセンターに特化した人材派遣会社と同じポジショニングです。

ただし、自社のコールセンターで働く人材も含めて、コールセンター人材の採用・研修の経験が豊富です。コールセンター向きの人材を採用する眼力や育成能力は、派遣業務だけの会社より優れているはずです。また、管理者の派遣、あるいは、管理者とオペレーター数人をセットとして「チーム派遣」ができるのは、コールセンター運営会社に限られます。

コールセンター業務の抱える課題を自分ごととして把握しているので、コールセンター運営においての提案やフォローも具体的で納得感があるはずです。

● コールセンター人材派遣の「派遣先」の立場で考えてみる

次に、派遣先ごとに、その立場になって考えてみましょう。最初の図の中では、5つの派遣先が登場します。

【1】 一般企業A社内のオフィスの作業員
【2】 一般企業B社内のコールセンターのオペレーター
【3】 一般企業C社内のコールセンターの運営チーム(管理者とオペレーター)
【4】 一般企業D社内のコールセンターで、業務運営を受託しているコールセンター運営会社のオペレーター
【5】 コールセンター運営会社の自社コールセンターのオペレーター

あなたは、それぞれの人材を採用する責任者だとします。
それぞれの場合に、どの派遣元に派遣社員をお願いするのが良さそうなのかを考えてみます。

【1】 一般企業A社内のオフィスの作業員

おそらく、大手人材派遣会社に依頼するのが無難なのではないでしょうか。ただし、コールセンター要員と同時に事務スタッフも依頼する場合や、コールセンター内での事務作業の場合には、コールセンター専門の人材派遣会社やコールセンター運営会社に依頼しても良いでしょう。

【2】 一般企業B社内のコールセンターのオペレーター

これが最も悩むパターンです。大手人材派遣会社の量的な豊富さを取るのか、それとも、専門的・質的な部分に期待を込めて、業界専門の人材派遣会社やコールセンター運営会社に依頼をするのか。もし、自社での教育に自信があり、業務フローも確立されているのであれば大手派遣会社にお願いするのが良いはずです。

逆に、教育や業務フローについても力添えを期待するのであれば、コールセンター運営会社に依頼するのが良いでしょう。また、将来的に、人材派遣サービスから、業務委託やアウトソーシングへの切替を視野に入れている場合にも、コールセンター運営会社を頼るのが良いはずです。

【3】 一般企業C社内のコールセンターの運営チーム(管理者とオペレーター)

管理者も含めたチーム派遣であれば、コールセンター運営会社に依頼するのが良いでしょう。大手人材派遣会社だけではなく、コールセンター業界専門の人材派遣会社であっても経験豊富な管理者を派遣することは難しいはずです。

【4】 一般企業D社内のコールセンターで、業務運営を受託しているコールセンター運営会社のオペレーター

運用形態が複雑に見えますが、よくあるパターンです。派遣社員の職場は「一般企業D社」ですが、派遣会社の契約相手(顧客企業)は 一般企業D社の中で業務委託を受けている「コールセンター運営会社」です。

たいていのコールセンター運営会社では、コールセンター運営に必要なスキルや業務内容を自社で教育する仕組みが整っていますので、一般の人材派遣会社からの派遣社員で十分であることがほとんどです。稀に、それ相応のスキルが必要な場合やスタッフを教育する時間がない場合には、同業のコールセンター事業者からの人材派遣を選択するでしょう。

【5】 コールセンター運営会社の自社コールセンターのオペレーター

本音を言えば、コールセンター運営会社は、派遣会社などからの派遣社員ではなく、自社で直接雇用した人材を活用したいのですが、業務開始までに必要な人材を自前で確保できない場合、特に、短期集中で大量の人員が必要な場合には人材派遣に頼らざるを得ない状況となります。

派遣元としては、インハウスでの業務委託と同様に、一般的な大手人材派遣会社、あるいは、場合によっては同業のコールセンター運営会社を選択するでしょう。

● コールセンターで働く「派遣社員」の立場で考えてみる

最後に、派遣社員として働く人の視点で考えてみます。

収入が必要だけれども、特別な資格やスキルがない。でも、できれば、肉体労働は避けたい。オフィスで事務や電話応対の仕事ならやってみたい。

そのような場合に候補になるのが、コールセンターのお仕事です。

少しでもコールセンターで働く可能性があるのであれば、大手派遣会社への登録だけではなく、コールセンター特化型の人材派遣会社や、コールセンター運営会社への人材登録をオススメします。それにより、自分にあった職場が見つかる可能性が高まるからです。特に、一般の方は、コールセンター運営会社が、人材派遣業を営んでいることを知らないことも多いので、狙い目かもしれません。

また、目先の就職も大切ですが、派遣期間が終了した時のことも考えておいたほうが良いでしょう。

例えば、3年経過して、直近のお仕事が終了したとします。そして、次のお仕事を探すときに、人材派遣専門の会社ではコールセンターでの経験がリセットされて、一からのスタートになります。

一方、コールセンター運営会社であれば、他の派遣先で仕事をする以外に、自社のコールセンターで働く選択肢もあります。その際には、過去の派遣先でのコールセンター業務の経験が役に立つでしょうし、それまでのキャリアを活かして、管理者として活躍できる可能性もあります。

ですので、コールセンター業務に興味をお持ちの方は、コールセンター運営会社経由での人材派遣にも目を向けてみては如何でしょうか?

人材派遣用語 <一覧>



コールセンターBPO・コラム <一覧>