BtoBでのマーケティング・オートメーションとテレアポとインサイドセールス

テレアポとインサイドセールス。日本語で言えば、どちらも「電話営業」のひとつの形態ですが、マーケティング・オートメーション(MA)の世界では、元々の意味合いから離れて、テレアポは「悪」で、インサイドセールスは「善」だという風潮になりつつあります。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

● テレアポとは?

元々、テレアポとは、「既存顧客」か「新規顧客」かに関係なく電話でビジネスの相手とアポイントメント(約束)を取ることですが、コールセンター業界では、「コールセンターの電話オペレーターが新規の顧客からアポ(契約や、訪問の約束)を取り付けること」という意味合いで利用されることが多く、その意味合いを広く定着させてしまいました。実際、ネットで「テレアポ」と検索すると、コールセンターでの【新規開拓アポ取り要員】の求人情報が上位に並びます。

また、MA業界の人達は、テレアポをコールドリスト(自社の商品・サービスに興味関心がない人達のリスト)に架電する、とても効率の悪い電話での顧客アプローチというイメージ、つまり、「ドブ板営業」「飛び込み営業」と同じレベルの古き良き時代の産物だと世の中の人々に刷り込んでしまいました。

しかし、それは、テレアポ(電話営業)という行為が悪いわけではなくて、架電するリストが「コールドリスト」であることが問題なだけです。確率の高いリストを用意して架電すれば、何も問題はありません。例えば、A社の製品を既に使っている顧客に対して、アップセルやクロスセルの案内をすれば成果はあがります。もし、ホットなリストを用意して架電したとしたら、効果が期待できます。いろんな工夫をして効率を上げたものも、「テレアポ」と呼んで良いはずです。

● インサイドセールスとは?

インサイドセールスは、米国などでは国土が広いために、わざわざ訪問して対面で営業をするのが大変なので、電話やメールを活用して営業活動を効率化するのは当然なわけです。本来は、それが、インサイドセールス(テレセールス)の源です。

しかし、MAの世界では、MAツールを使うことが大前提で、配信メールを開封したら【3点】、クリックしたら【5点】、自社サイトの「このページ」を見たら【10点】、問合せをしたら【20点】、のように顧客に点数をつけて(スコアリングして)、スコアの高い人、つまり自社の製品・サービスへの興味関心が高い人達を抽出します。そして、その人たち(ホットリスト)に電話を架けることを「インサイドセールス」と呼んでいる風潮があります。

それは、言い換えると、MAツールを使わずに、やみくもに電話を架ける「テレアポ」という手法は効率が悪くてダメなやり方で、MAツールを活用して温まっている人達(ホットリスト)に架電する「インサイドセールス」は現代的で効率が高いということのようです。しかし、よく考えてみると、「テレアポ」「インサイドセールス」と、「コールドリスト」「ホットリスト」は、違う次元の話のはずです。

● マーケティング・オートメーションの宣伝?

メールと電話

おそらく、MAツールの効果をわかりやすく宣伝するために、MA業界の人達が、「コールドリストに架電することがテレアポで、ホットリストに架電することがインサイドセールスだ」という認識を広めてしまったのです。

もちろん、MAツールの導入で費用対効果が望めるのであればツールを利用すれば良いでしょうし、そうでなければ他の方法を考えるべきでしょう。商材によって、MAツールが効果を発揮することがあるでしょうし、逆に、昔ながらの展示会営業のほうがマッチする場合もあるでしょう。

つまり、B to B のマーケティング活動・セールス活動においては、如何に効率的に自社の製品・サービスに興味関心の高い人達を集めるか、そして、その人達にアプローチするかが大切なわけで、その手法のひとつにMAツールがあるのは間違いありませんが、MAツールが全てを解決してくれるわけでもありません。

そして、「テレアポ」が古くて効率が悪い手法だとは言い切れませんし、逆に、「インサイドセールス」が現代的で効率が高い手法だというわけでもありません。

要は、「テレアポ」なのか「インサイドセールス」なのかではなくて、「コールドリストに架電するか」、それとも「ホットリストに架電するか」が大きな違いなのであり、MAツールを使うかどうかは必須ではなくて、如何に「ホットリスト」を効率的に集めることができるのかが BtoBマーケティングの課題であることを忘れてはなりません。