ザイオンス効果(単純接触効果)|経済行動の心理学

人は、何かに接触する頻度が増えると、それを受け入れる性質があります。

初対面の相手に対しては、自身の心の中に「防御の姿勢」が生まれます。しかし、毎日、顔を合わせている人には仲間意識が生まれます。

最初は違和感を覚えたポスターや看板でも、毎日、目にするうちに、いつの間にか馴染んでしまったという経験はないでしょうか?

あるいは、朝のテレビ番組で 新コーナーが始まったときに、最初のうちは「この人、誰?」と思っていたはずが、そのうちにお馴染みの「いつもの人」へと認識が変わったことはないでしょうか?

このように接触する回数の多いもの、接触する頻度が高いものに対して、心を開いてしまうのがザイオンス効果(単純接触効果)と呼ばれるものです。(ただし、嫌悪感を抱くものに対しては、より嫌いになります。)

昔の営業員は、用事がなくても お客さまを訪問することが大事な仕事だとされました。それは、高い頻度で顔を出すことで 顧客に親近感を抱いてもらうことが目的でした。そうすることで、実際にニーズが生まれたときには、顧客から相談を受けることができ、自社の商品・サービスの受注に繋がりました。

しかし、オフィスやマンションではセキュリティシステムの導入が一般的になり、外部者が自由に建物内に足を踏み入れることができなくなりました。事前にアポイントメント(約束)を取り付けてから顧客を訪問するのでは、どうしても面談を断られることが多くなり効率が下がります。(もちろん、顧客の側からすれば、アポなし訪問は自身の仕事を中断する必要がありますので、生産性が下がりますし迷惑であるのは事実です。)

さらに、新型コロナウィルスの感染拡大により、リモートでの面談やテレワークなどが普及し、営業員が顧客と対面で顔を合わせる機会はますます減少しました。

その結果、対面以外で、如何に顧客との接触回数を増やすのかがより重要になっています。

例えば、テレビやネットなどの広告。メールマガジン。チラシ。ウェブのSEO対策。SNS。ウェビナー。営業員やコンタクトセンターからの電話/メール/チャットでのやりとり、など。

これまでと同様に、あるいは、これまで以上に 顧客との接触頻度を担保し、かつ、対面営業よりも生産性の高い手段が日本中の企業から求められています。

ただし、時代の流れによって手段や方法が変わったとしても、人間の根底にある性質は変わらないはずです。あなたも、このザイオンス効果を理解した上で、顧客との接点をデザインしてみては如何でしょうか。