バーナム効果|経済行動の心理学

バーナム効果とは、例えば、「あなたは他人にフレンドリーなこともあれば、閉鎖的なこともある人です。」「バラの香りで、あなたは辛い気持ちをリフレッシュできるでしょう。」というような、一般的で誰にでも当てはまるような人間の性質を言われているだけであるのに、あたかも自分の心理や特質を見透かされていると思い込んでしまう心理的な現象のことです。

「We've got something for everyone. 」(誰にでも当てはまるものがある)という言葉を残した、(19世紀にサーカスの興行をしていた)バーナムという人物の名前から「バーナム効果」と呼ばれています。

バーナム効果を活用する側(企業など)からすれば、
顧客に、運命・天命などを連想させ、その筋の権威の後押しにより箔をつけることで、その本人だけがその幸運に巡り合ったのだと思い込ませ、自社の商品・サービスの販売を実現する可能性を高めることができるということです。

人は誰でも、大きな決断をする際には不安を抱くものです。
そのときに、占いに頼ったり、権威のある人の意見にすがろうとすることは不思議ではありません。

もちろん、日々の軽い判断であれば、敢えて、そういうものに流されたとしても、何の問題もありません。

「外出に何色の服を着て行くのか?」「ランチに何を食べるのか?」という選択は、個人の感性・感情・嗜好により判断すれば良いものであって、いちいち論理的・科学的な根拠を必要とするものではありません。

ただし、お葬式に真っ赤な服を着て出かけたり、高血圧なのに高脂肪なメニューを選択するのはNGでしょうし、自身の経済力に見合わない選択(とてつもなく高価な洋服や食事など)はそもそも実現できないわけです。

逆に、そのような制約がない場合には、衣服や食事などは、感性・感情・嗜好によって選択すれば良いだけなのですが、それでも、「迷ってしまう」「決めきれない」というときに、占いのとおりに行動することには何の問題もないはずです。極論を言えば、元々、何でも良いからです。

しかし、転職や独立、不動産の購入や大規模な投資など、人生を賭けた大きな決断の場面では、一度、立ち止まって自分にこう問いかけてみてください。

「それは、本当に自分だけに当てはまることなのだろうか?
本当は、世の中の誰にでも当てはまるようなことを、自分だけだと聞かされているのではないだろうか?」
と。

朝のテレビの星占いで、「今日は、大きな決断をする日だ」と言っていた。
昼間にネットで読んだ有名な大学教授の記事に、「今が不動産を買うラストチャンスだ」と書いてあった。
夕方に参加した投資のウェビナーで「今、このウェビナーに参加したのは運命です。」と言っていた。
夜に不動産会社から電話が架かってきて、「とても、良い物件があるんです!〇〇さんにピッタリなんですよ。」と聞かされた。

これは、天命に違いない。自分のために神様が用意してくれたのだ。
そう思いたくなる気持ちは理解できます。

しかし、
その業界全体がビジネスのために「バーナム効果」を利用しているだけなのではないか?
目の前の相手が、知ってか知らずか「バーナム効果」を活用しているのではないか?

そう疑ってからでも、決断は遅くないはずですし、大切な決断には 科学的・論理的な思考を忘れてはいけません。