クラウド|DX(デジタルトランスフォーメーション)の用語

1995年頃、日本でインターネットの商用サービスが始まった頃には、まだ世の中では「インターネット」という言葉は一般化していませんでした。その後、自宅のパソコンにアナログモデムを繋いで電話回線(アナログ回線)経由でインターネットに接続するサービスが普及し、さらにADSL回線が登場ましたが、その20世紀末、インターネット網を図で表す場合には、WEBやWWWという文字と伴に「蜘蛛の巣」の絵を描くことが一般的でした。インターネット網は、蜘蛛の巣のように網目模様であることを意識してのことだと思いますが、そもそも、WEBとは英語で「蜘蛛の巣」という意味ですので、当時はそれが常識とされていました。

それが、2000年を過ぎた頃から、何故だか「蜘蛛の巣」が「雲」の絵に置き換わったのです。インターネットの利用方法が多様化して、WWW(ホームページ)を閲覧することだけがインターネットの利用方法ではなくなったことが理由の1つかもしれません。

インターネット網を表す「蜘蛛の巣」と「雲」。日本語だと、どちらも「クモ」という発音に関係するのは、あくまでも偶然の一致ですが、少し面白いですよね。

さて、2000年頃に、データセンターというインフラビジネスが始まりました。耐震性が高くて電源設備も二重化されインターネットに大容量で接続されているサーバーを設置するための専用の堅牢な建物がデータセンターです。そのデータセンターが登場してまもなく、企業のビル内(機械室など)にサーバーを置くのではなくて、そのデータセンターに自社のサーバーを設置することが段々と増えていきました。

当時は、データセンターの中にスペースを借りて自社でラックを立てることもあれば、データセンター事業者が用意したラック(19インチラック)を借りることもありました。

それと並行するように、データセンターにウェブサーバーなどを設置して、企業にレンタル(レンタルサーバー)するビジネスが流行り始めました。レンタルサーバーは、顧客企業に対して専用に1台を割り付けることもあれば、提供料金を下げるために複数の顧客企業で共有することもあります。そうして、インターネットの向こう側で、普段出入りすることのないデータセンターに設置された見たことのないサーバーによってサービスが提供されるというサービス形態が広がっていきました。

そして、段々と物理的にどこにどのようなサーバー(ハードウェア)が設置されているのかよりも、どのような機能(ソフトウェア)が提供されているのかに焦点が移っていったのです。

こうして、インターネットのどこにあるのかわからない、何も見えない、実態のわからない「雲の向こう側」でコンピューターが稼働しているという意味で、クラウド・コンピューティングという言葉が使われるようになったのだと考えられます。

つまり、クラウド・コンピューティングとは、インターネットに繋がっているどこかでコンピューターが処理を進めることです。

そして、そのクラウド・コンピューティングが普及するに連れ、クラウド・コンピューティングを短く簡単に「クラウド」と呼ぶようになりました。あいかわらず、インターネット網を絵で表すときには雲(クラウド)を書きますが、言葉でクラウドというとインターネット上で提供されるコンピューターサービスのことを指すように変わっていったのです。

ちなみに、いろんな人に少しずつ出資してもらうクラウド・ファンディングという仕組みがありますが、その場合のクラウドは、雲(cloud)の意味ではなくて 群衆(crowd)という意味ですので、お間違えなく。