「とんでもない」という言葉には、いくつかの意味があります。以下に、その主な用途を説明します。
1. 謙遜の表現として
日本の言語文化では、誉められた時や感謝された時に謙遜を表現するために「とんでもない」を使用します。例えば、「君の手助けがなければ成功しなかったよ」と言われたとき、「とんでもない、私は少ししか手伝っていない」と応えることができます。ここでは「とんでもない」は「そんな、私が大したことをしたわけではない」という意味を表しています。
2. 驚きや強い否定の表現として
また、「とんでもない」は、思ってもみない事態や信じられないほどの事態を表すためにも使用されます。例えば、「彼がその大きなプロジェクトを一人で完成させた」というニュースを聞いて、「それはとんでもないことだ」と言うことができます。また、断固とした否定としても使われます。「あなたがそれをする必要がある」と言われた時、「とんでもない、私がそれをするわけにはいかない」と応えることができます。
「とんでもない」に関する注意点
「とんでもない」は英語で直訳すると “No way” や “Unthinkable” などとなりますが、日本語の繊細なニュアンスを全て英語に移すことは難しいので、英語話者がこのフレーズを使用するときに誤解を招くことがあります。
また、謙遜の表現として使用する際には、適切なコンテキストが重要です。「とんでもない」を使うことで、誉められていることを否定してしまうように見えるかもしれません。例えば、「あなたの絵は素晴らしい」と言われた時に「とんでもない、まだまだです」と応えると、自分の作品を全く評価していないか、あるいは相手の評価を全く信じていないと思われる可能性があります。これは、ある程度、日本の文化的な謙遜の理解がなければ誤解を招く可能性があるため、注意が必要です。
「とんでもない」の丁寧な表現
「とんでもない」の敬語表現についてですが、実際にはそのまま敬語にするのが難しい言葉です。「とんでもない」は一種の固定表現で、そのまま敬語形(とんでもございません・・・など)に直すと不自然になる場合があります。
しかし、コンテキストにより適切な表現を使うことで、「とんでもない」の意味を敬語で伝えることができます。例えば、誉められたり感謝されたりしたときに謙遜として「とんでもない」という言葉を使わずに、「恐れ入りますが、私のしたことは大したことではございません」というように表現できます。
あるいは、「とんでもないことでございます」のように言うことも可能です。ただし、この表現は文脈によっては非常に強い否定または驚きを表す場合があるので、使い方には注意が必要です。また、日常的な場面で、「とんでもないことでございます」と口にするのは、少々勇気が必要です。
私も、「とんでもないことでございます」という言い回しを聞いたのは、テレビ番組の中だけです。しかも、それは、皇室関係者、NHKのアナウンサー、ホテルの支配人など、日本語の使い方に慎重さを求められる方々です。
これは、あくまでも、一般的な職場での言葉の用法としてですが、「とんでもない」は、「とんでもない」と言い切るか、「とんでもない・・・です」くらいで使っておけば良いのではないでしょうか。
日常会話の中で、「とんでもないことでございます」と口にすると、相手との心の距離が遠くなるかもしれませんので。