戦略とは、元々は戦争のために考えられたものです。しかし、今では、経営戦略、マーケティング戦略、財務戦略、営業戦略、人材戦略、組織戦略、広報戦略・・・など、企業経営のあらゆる場面で登場する言葉になりました。
その戦略とは、一言で言ってしまえば、目標に到達するための手段・道のり・プロセスのことです。ただし、それだけでは、正確に伝わらないかもしれませんので、もう少し詳しく説明していこうと思います。
まず、組織を運営するために最も大切なことは、「課題設定」です。
現在、既にこのような問題を抱えている。あるいは、未来のどこかでこのような問題に直面する可能性が高い、など。
課題設定における時間軸には、現在~近未来~遠い未来と、かなりの幅があるでしょう。
そのように時間の幅はあるにせよ、それが自分達に対して大きな影響を与える可能性が高く、どうしても、解決しておかなければならない。そのような対象を抽出して、課題として設定することが組織運営には必要です。
例えば、最重要顧客が逃げてしまい、売上も利益も大きく減少してしまった。それを補うために早く何らかの手を打たなければならない状況だとしましょう。
売上と利益が減少したことは、大きな問題であることは間違いありません。ただし、設定する課題には、いくつかの選択肢があるはずです。
例えば、
選択肢1: 売上と利益を、100%元に戻す方法を考える
選択肢2: 売上はあきらめて、利益だけを100%元に戻す方法を考える
選択肢3: 売上はあきらめて、利益だけを50%元に戻す方法を考える
などです。
例えば、選択肢2の「売上はあきらめて、利益を100%元に戻す方法を考える」ことを自社の課題に設定したとしましょう。
すると、その課題をいつまでに解決するのかが目標です。「半年以内に」利益を100%元に戻すとか、「1年以内に」利益を100%元に戻すというのが目標設定になります。
そして、どうやって、その目標を達成するのかが「戦略」です。
例えば、「半年以内に」利益を100%元に戻すという目標設定に対して、次のような戦略が考えられます。
戦略1:半年以内に、失った顧客と同規模の顧客(仕事)を獲得する
戦略2:半年以内に数多くの顧客(仕事)を獲得して、合計で元の規模を確保する
戦略3:半年以内に費用を圧縮して、利益を確保する
この3つの戦略を並べて検討するとします。
もちろん、「戦略1」や「戦略2」のように、都合よく顧客が獲得できるとは限りません。
だからと言って、「戦略3」のように費用の圧縮だけでは、目先は良くても将来的に不安が残ります。
そこで、目標設定に戻って、「半年以内に利益を50%元に戻し、数年かけて売上と利益を100%元に戻す」という目標に設定しなおすことも考えられます。
このように、プロセスである「戦略」と、ゴールである「目標」は、単に一方通行なだけではなくフィードバックによって修正される可能性もあるために、「戦略」と「目標」の違いが曖昧になることがあります。
その結果、「今年度は売上100億円を目指す!」という単なる目標設定を「戦略立案」だと勘違いする人達が現れてしまうのかもしれません。
あくまでも、「目標」はゴールであり、「戦略」は道のり(プロセス、方法)です。
ちなみに、これらの戦略を実現するためには、手順へのブレークダウンが必要です。
例えば、
【顧客獲得について】
・可能性の高い見込み顧客をリスト化してダイレクトメールを送付する
・人脈を活用して、見込み顧客の経営陣にトップ営業を仕掛ける
・テレマーケティング/ウェブマーケティング/メールマーケティングで、見込み顧客の裾野を広げる
【費用削減について】
・無駄な出費をなくす
・ITを活用して、自動化できる作業を自動化する
・アウトソーシングを活用する
このような戦略の細かな部分は、「戦術」と呼ばれる場合もあります。
さて、ここまで、課題設定 => 目標設定 => 戦略策定 について説明しました。
もちろん、良い戦略とは、「課題設定」と「目標設定」が的確であるという条件の下で成立します。
逆に言えば、最初に「課題設定」や「目標設定」を間違えてしまえば、いくら優れた戦略を立案しても何の役にも立たないということです。(それを本当に優れた戦略と呼ぶべきなのかという疑問もありますが。)
どれだけ高性能な宇宙船を開発しても、月の軌道を正しく計算できなければ、月面に着陸できないのと同じです。
時には、無意識に「課題」や「目標」の設定を間違ってしまうこともあるでしょう。しかし、その場合は、ミスに気付いた時点で軌道修正することができるはずです。
それよりも、意識的に「課題」から目を逸らすことのほうが問題です。
何が本来の課題であるのか、つまり、問題の本質を理解しているにも関わらず、その課題があまりにも難題であるが故に、問題を先送りしたり回避してしまっていないでしょうか?
もし、そうであれば、勇気をもって課題に実直に向き合うことが必要です。そうしなければ、問題解決のための「アイデア」や「ひらめき」は決して生まれてきません。本来、あるべき理想の姿に向かっていくことが何よりも大切です。
だだし、「課題設定」と「目標設定」がいくら適切であっても、悪い戦略は生まれます。
ここで、再び、「半年以内に利益を50%元に戻し、数年かけて売上と利益を100%元に戻す」という目標を例に挙げます。
この目標を達成するために、「売上を伸ばす方法」と「費用を削減する方法」について戦略を立てるとします。
売上を伸ばす戦略: 気合を入れてドブ板営業を展開する。
費用を削減する戦略: 早期退職制度などで、できるだけ多くの人員を削減する。
もちろん、悪い戦略では、良い結果に繋がることはありません。それだけでなく、スタッフのモチベーションを低下させたり、優秀なスタッフの離脱(退職)を招くことになりかねません。
このように、悪い戦略の恐ろしいところは、「結果がゼロ」、つまり、「成果がない」だけではなく、「マイナス」の結果を伴うということです。
「課題」とは問題解決すべき対象(ターゲット)であり、「目標」とは課題解決のために設定したゴール(いつまでに/どれくらい/どうする)です。そして、「戦略」とは、その目標(ゴール)に辿り着くための具体的なプロセス(道のり、方法)です。
課題設定や目標設定が間違っていれば、いくら頭に汗をかいて戦略を練っても無駄になります。また、課題設定や目標設定が的確であっても、悪い戦略を立ててしまえば、みんなが不幸になります。
それだけに、課題設定・目標設定・戦略立案は、とても重要なものであり、慎重かつ大胆に検討を進める必要があるのです。
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