マーケティングリサーチは、手順と心構えで 「魔法の杖」 に変わるの?

このコラムでは、マーケティングリサーチに対する心構えと、その手順・プロセスについて、ご説明します。

マーケティングリサーチ

● 仮説とは

仮説とは、「おそらく、こうなのではないか」 という想定です。
是非、 あなたのビジネスにとって、キーとなる大切な仮説を立てることに 時間と労力を割いてください。
定性調査などを活用しながら "仮説" を立てて、定量調査で 検証する。 これが、本当に重要です。

例えば、ある商品の売上が落ちてきたとします。

・自社のトラブルは?
・競合の動きは?
・消費者の行動や心理の変化は?

など、いろんなことが原因として考えられるでしょう。

どうやら、「消費者の行動や心理の変化」 が主な原因だと思えるなら、マーケティングリサーチの出番です。
かつ、ここからが、大事な仮説の立案作業です。

・働く女性が増えたことで、家事の時間が減って、○○が売れなくなったのではないか?
・少子化だが、子供1人にかける△△費は増えているので、贅沢品のxxが売れて、安価な□□ は売れなくなったのではないか?

など。

このような仮説が本当に正しいのかを検証するのが、マーケティングリサーチの本来の役割です。

調査会社にとっては、やみくもに、「大量のサンプル数」 × 「大量の設問数」 でアンケートを実施してくれる顧客は 本当に良いお客さまです。
タクシーに例えると、長距離利用の気前の良いお客さんのようなものです。

しかし、本気で顧客のことを考えるのであれば、「電車のほうが早いですよ」 「バスのほうが安いですよ」 などと教えてあげるべきです。

だから、私も大きな声でお伝えします。

漠然としたリサーチで多額の調査費用を浪費するよりも、 仮説を立てること にお金を使うほうが有意義ですし、 結果的に安い費用で済みますよ、と。

ですので、3C 分析、 4P (マーケティングミックス)、 5F (5つの力) などのフレームワークを使いながら、一生懸命に仮説を考えるステップを省力してはいけません。

ただし、その重要性を理解していても、時間の都合などで自らは実行できない人もいるでしょう。
そういう場合は、是非、コンサルタントに相談してみてください。

● 仮説の立て方

仮説を立てる方法にも、いくつかあります。

・自分の頭の中で考える
・周囲の人に確認してみる
・自社で保有するデータを調べる
・ネットで調べる
・調査会社を使って、個別インタビューやグループインタビューを実施する

など。

繰り返しますが、ここで時間と労力と多少のお金を惜しんではいけません。

そして、仮説を立てた後は、それをどうやって検証するか、です。

ちなみに、リサーチには、ある現象の "原因" を特定するためのリサーチと、(既に原因はわかっていて) "解決策" を模索するためのリサーチがありますが、リサーチの手順は どちらも同じです。

● 調査対象 (サンプル) を決める

複雑な分岐 (絞り込み) や、 クロス集計を想定しないのであれば、 30サンプル × 2グループ = 60サンプル で必要なデータは取得できます。

最初のグループは、あなたのビジネスの対象になる人達。 もう、1つのグループは、それと比較するための人達です。

ちなみに、「30」 という数字には、統計学の理論的な裏付けはありません。 30人くらいで、ある程度の傾向が出るという経験則です。
サンプル数を増やせば、誤差が小さくなるのは確かですが、どこまで行っても誤差がゼロになることはありません。

(不安なので、サンプル数を どんどん増やしてしまいがちですが)
プロジェクトのゴー/ノーゴーを決めるための 最低限の結果が得られれば良いと割り切って、 サンプル数を無駄に増やすことはやめておきましょう。



● 調査方法 (定量調査) を決める

一般的には、インターネット調査を 選択します。 安いし、早いし、処理がしやすいです。 ネット調査の特性 (ITに弱い人は参加できないこと) さえ理解しておけば 大きな問題はありません。

インターネット調査の他には、郵送調査や、訪問調査などがありますが、調査に時間も手間もかかります。 回答結果をデータ化する労力も必要です。 結果して、調査費用が高くなります。



● アンケート (調査票) を設計する

回答者の負担を考えると、設問数が多すぎるアンケートはオススメしません。 理想を言えば、設問数は10問~20問程度ではないでしょうか。

・最初の数問で、回答者の頭をウォーミングアップ。 (前菜)
・その後、やや、本題に近寄りながら、 (スープ)
・本題に数問。 (メインディッシュ)
・最後は、必要な属性などを確認します。 (デザート)

調査会社のモニターを活用したネット調査であれば、 事前に、 性別・年代・居住地域などの属性が登録されていますので、 敢えて 設問で確認する必要はありません。 それ以外の回答者の属性を聞いておけば、あなた独自の分析に役立つはずです。

● アンケートを実施する (実査)

ネット調査の場合、実施には2種類があります。 予備調査(スクリーニング)本調査 と呼ぶことが多いようです。

予備調査とは、調査対象者を絞り込む(集める)ための調査です。 通常、予備調査は、1週間以内で完了します。

本調査は、サンプル数にもよりますが、余程の難しい条件でなければ 1~2日程度で完了します。



● アンケートの回答を 集計 ・ 分析する

ネット調査のうれしいところは、 実査後 すぐにローデータ (生データ) を 手元のパソコンにダウンロードして 分析できることです。
ちなみに、ネット調査会社が提供するソフトで集計・分析作業を実施することもできますし、市販の専用ソフトを利用することもあります。



~ まとめ ~

【 NG 】

いろんな人に、いろいろと質問すれば、何か1つくらい 良いヒントが掴めるはずだ という思い込み。
⇒ 膨大な設問数のアンケートを実施し、「そんなことは、元々、わかっているよ」 と言いたくなるような結果しか得られない。

調査は、サンプル数 (回答者数) と設問数によって、 料金が決まることが多いので、 相当な金額を使って、 結局、何もわからなかった・・・ ということになりがちです。 それが故に、マーケティングリサーチは役に立たないという話になってしまうのですが、そもそも、リサーチに対する認識が間違っているのです。 マーケティングリサーチは、何も考えずに欲しい結果が得られる “魔法の杖” ではありません。

【GOOD】

アンケートで、【仮説】 が正しいかどうかを確かめよう という姿勢。
⇒1つの仮説を確かめるだけなら、対象グループと、比較のためのグループ、 それぞれで30サンプルずつ (合計60サンプル) 、 設問数 10問程度で とても重要なデータを取得することができます。

何事もそうですが、本来の効能を得るためには、本来の使い方が必要です。 マーケティングリサーチは、仮説を立てて、それを検証するもの。 「その心構えなしで満足な成果は得られない」 と心に留めておきましょう。

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