このコラムでは、マーケティングリサーチに対する心構えと、その手順・プロセスについて、ご説明します。
仮説とは、「おそらく、こうなのではないか」 という想定です。
是非、 あなたのビジネスにとって、キーとなる大切な仮説を立てることに 時間と労力を割いてください。
定性調査などを活用しながら "仮説" を立てて、定量調査で 検証する。 これが、本当に重要です。
例えば、ある商品の売上が落ちてきたとします。
・自社のトラブルは?
・競合の動きは?
・消費者の行動や心理の変化は?
など、いろんなことが原因として考えられるでしょう。
どうやら、「消費者の行動や心理の変化」 が主な原因だと思えるなら、マーケティングリサーチの出番です。
かつ、ここからが、大事な仮説の立案作業です。
・働く女性が増えたことで、家事の時間が減って、○○が売れなくなったのではないか?
・少子化だが、子供1人にかける△△費は増えているので、贅沢品のxxが売れて、安価な□□ は売れなくなったのではないか?
など。
このような仮説が本当に正しいのかを検証するのが、マーケティングリサーチの本来の役割です。
調査会社にとっては、やみくもに、「大量のサンプル数」 × 「大量の設問数」 でアンケートを実施してくれる顧客は 本当に良いお客さまです。
タクシーに例えると、長距離利用の気前の良いお客さんのようなものです。
しかし、本気で顧客のことを考えるのであれば、「電車のほうが早いですよ」 「バスのほうが安いですよ」 などと教えてあげるべきです。
だから、私も大きな声でお伝えします。
漠然としたリサーチで多額の調査費用を浪費するよりも、 仮説を立てること にお金を使うほうが有意義ですし、 結果的に安い費用で済みますよ、と。
ですので、3C 分析、 4P (マーケティングミックス)、 5F (5つの力) などのフレームワークを使いながら、一生懸命に仮説を考えるステップを省力してはいけません。
ただし、その重要性を理解していても、時間の都合などで自らは実行できない人もいるでしょう。
そういう場合は、是非、コンサルタントに相談してみてください。
仮説を立てる方法にも、いくつかあります。
・自分の頭の中で考える
・周囲の人に確認してみる
・自社で保有するデータを調べる
・ネットで調べる
・調査会社を使って、個別インタビューやグループインタビューを実施する
など。
繰り返しますが、ここで時間と労力と多少のお金を惜しんではいけません。
そして、仮説を立てた後は、それをどうやって検証するか、です。
ちなみに、リサーチには、ある現象の "原因" を特定するためのリサーチと、(既に原因はわかっていて) "解決策" を模索するためのリサーチがありますが、リサーチの手順は どちらも同じです。
複雑な分岐 (絞り込み) や、 クロス集計を想定しないのであれば、 30サンプル × 2グループ = 60サンプル で必要なデータは取得できます。
最初のグループは、あなたのビジネスの対象になる人達。 もう、1つのグループは、それと比較するための人達です。
ちなみに、「30」 という数字には、統計学の理論的な裏付けはありません。 30人くらいで、ある程度の傾向が出るという経験則です。
サンプル数を増やせば、誤差が小さくなるのは確かですが、どこまで行っても誤差がゼロになることはありません。
(不安なので、サンプル数を どんどん増やしてしまいがちですが)
プロジェクトのゴー/ノーゴーを決めるための 最低限の結果が得られれば良いと割り切って、 サンプル数を無駄に増やすことはやめておきましょう。
一般的には、インターネット調査を 選択します。 安いし、早いし、処理がしやすいです。 ネット調査の特性 (ITに弱い人は参加できないこと) さえ理解しておけば 大きな問題はありません。
インターネット調査の他には、郵送調査や、訪問調査などがありますが、調査に時間も手間もかかります。 回答結果をデータ化する労力も必要です。 結果して、調査費用が高くなります。
回答者の負担を考えると、設問数が多すぎるアンケートはオススメしません。 理想を言えば、設問数は10問~20問程度ではないでしょうか。
・最初の数問で、回答者の頭をウォーミングアップ。 (前菜)
・その後、やや、本題に近寄りながら、 (スープ)
・本題に数問。 (メインディッシュ)
・最後は、必要な属性などを確認します。 (デザート)
調査会社のモニターを活用したネット調査であれば、 事前に、 性別・年代・居住地域などの属性が登録されていますので、 敢えて 設問で確認する必要はありません。 それ以外の回答者の属性を聞いておけば、あなた独自の分析に役立つはずです。
ネット調査の場合、実施には2種類があります。 予備調査(スクリーニング) と 本調査 と呼ぶことが多いようです。
予備調査とは、調査対象者を絞り込む(集める)ための調査です。 通常、予備調査は、1週間以内で完了します。
本調査は、サンプル数にもよりますが、余程の難しい条件でなければ 1~2日程度で完了します。
ネット調査のうれしいところは、 実査後 すぐにローデータ (生データ) を 手元のパソコンにダウンロードして 分析できることです。
ちなみに、ネット調査会社が提供するソフトで集計・分析作業を実施することもできますし、市販の専用ソフトを利用することもあります。
【 NG 】
いろんな人に、いろいろと質問すれば、何か1つくらい 良いヒントが掴めるはずだ という思い込み。
⇒ 膨大な設問数のアンケートを実施し、「そんなことは、元々、わかっているよ」 と言いたくなるような結果しか得られない。
調査は、サンプル数 (回答者数) と設問数によって、 料金が決まることが多いので、 相当な金額を使って、 結局、何もわからなかった・・・ ということになりがちです。 それが故に、マーケティングリサーチは役に立たないという話になってしまうのですが、そもそも、リサーチに対する認識が間違っているのです。 マーケティングリサーチは、何も考えずに欲しい結果が得られる “魔法の杖” ではありません。
【GOOD】
アンケートで、【仮説】 が正しいかどうかを確かめよう という姿勢。
⇒1つの仮説を確かめるだけなら、対象グループと、比較のためのグループ、 それぞれで30サンプルずつ (合計60サンプル) 、 設問数 10問程度で とても重要なデータを取得することができます。
何事もそうですが、本来の効能を得るためには、本来の使い方が必要です。 マーケティングリサーチは、仮説を立てて、それを検証するもの。 「その心構えなしで満足な成果は得られない」 と心に留めておきましょう。