ナッジ(nudge)|AI・人工知能の用語

ナッジ(nudge)という英単語は、「ひじでそっと突く」「ひじでそっと押して動かす」「そっと動かす」などの意味です。

保育園でみんなのところに近づけない幼児の背中をそっと押してみる。誰も立候補しない小学校の学級委員に「君がやりなよ!」と言わんばかりに隣の席の子が肘で突いてくる。そのような人や動物に行動を促す動作を意味しています。

人間は、経済的に最良の行動を取るとは限りませんし、いつも道徳的な行動を取るとも限りません。しかし、厳しく注意されたり命令されると反発することもあります。そのために、望ましい行動を取るように、そっと促すことが有効であることがしばしばあります。

「大きな声で話さないでください」「写真を撮らないでください」と口頭でお願いすると、「そんなこと、どこに書いてあるんだ!」と怒り出す人がいますが、事前に紙に書いて貼っておくと、誰も文句を言わずにみんなが従ってくれることがあります。

そのように、ナッジとは、行動科学の知見から、望ましい行動をとれるように人を後押しするアプローチのことで、人の意思決定に「そっと」「ふわっと」影響を与えて、自らの意思による行動変容を促すためのものです。文章・画像・デザインなどの工夫によって、人の心に訴えかけて人の行動を行動科学的に変容させる「ナッジ理論」は有名です。

今後、AIが進化すれば、AIは人間よりも深い推論によって正しくて合理的な結果を導き出す可能性が高くなるでしょう。しかし、人がそのAIの導き出した結論を受け入れるとは限りません。そこで、AIの世界でも、人間にそっと行動を促し、自身が意思決定したのだと思わせるナッジに由来する仕組みが不可欠だと言われています。