クロス集計こそがマーケティングリサーチの醍醐味かもしれない

調査結果の分析方法には、いろんな方法があります。調査会社であれば、必ず集計分析用のソフトを使っていて、そのソフト上でポチっとボタンを押せば、多少の前準備は必要ですが多変量解析も簡単にできます。しかし、クライアントに納得していただけるような結果に繋がることはなかなかありません。

稀に、ブランドイメージ調査などで、多変量解析が見事にハマることもあるでしょう。しかし、「へえ、すごいな」「面白いな」で終わってしまったり、「よく考えたら、そんなことは当たり前だけどね」となって、現場の施策に活かすことができないこともあります。

また、半年に1回などの定点調査で、前回はうまく分析できたけれども、今回は納得できる分析結果が出ずにガッカリされるということもあり得ます。

それに比べて、地味ではありますが、クロス集計は毎回コツコツと成果に繋がってくれることが多いのです。野球の二番バッターが地道にバンドで走者を進めるように、サッカーのサイドバックがずっと前後に走り続けるように、華やかさはありませんが、高確率でクロス集計は調査結果から価値のあるものを導き出してくれます。

● クロス集計とは

念のため、簡単に、クロス集計の説明をしておきます。 クロス集計とは、調査の「ある設問の結果」を、「他の設問の結果」や「回答者の属性」別に集計することです。違う設問の結果や属性を掛け合わせることです。

1つずつであれば、Excelのピボットテーブルでもクロス集計を実施することが可能ですが、手間と時間がかかるので、調査会社では専用の集計・分析ソフトで一気にやってしまいます。 ちなみに、その掛け合わせる設問(要素)のことを「分析軸」と言います。そして、その要素を掛け合わせることを「〇〇で切る」などと言います。

何を分析軸にするのか、つまり、どの設問をどの設問(あるいは属性)で切るのか、が調査の面白みであり、調査担当者の腕の見せどころでもあります。

それは、事前に仮説を立ててクロス集計の結果を確認する場合もあれば、調査結果後に全ての設問を全ての設問でクロス集計して「おっ」と思うものを見つけ出す場合もあります。

いずれの場合も、クロス集計の中から、価値のある結果を見つけた瞬間が調査担当者にとっての至福のときであることは間違いありませんし、それさえ見つかれば調査報告書の作成も楽しい作業になります。

● 単純集計とは

さて、クロス集計をしていない調査対象者全体の集計を単純集計と言います。

単純集計の結果は、どういう属性の人がどれくらい混ざっているのかによって違ってきます。そこで、事前に、回答者にどういう人をどれくらい混ぜるのかを決めておくことがあります。それを「サンプルを割り付ける」と言いますが、世論調査では、性年代別の比率を日本国民の性年代の比率に合わせてサンプルを割り付けることもあれば、無作為に調査した結果を調査後に割り戻す(ウェイトバック)方法もあります。

ただし、世の中の本来の比率と比べてサンプル数が極端に少ないセグメントがある場合にウェイトバックをしてしまうと調査結果に歪みが生じる可能性がありますので、調査設計の段階でよく考えなければいけません。

● 新聞記事を見て思うこと

よく新聞に世論調査の結果が掲載されます。しかし、調査に携わった経験のある人が見ると、いろいろと言いたいことがあるのではないでしょうか。

調査時期、調査方法(ネット、郵送、電話調査など)が記載されていなかったり、時には調査対象者や回答者数が記載されていない場合もあります。

そして、紙面の問題もあるのでしょうが、単純集計の結果だけが掲載されていることがよくあります。例えば、「あなたは、新型コロナウィルスの感染拡大に不安を感じますか?」という世論調査の結果として「8割の人が不安を感じている」などと新聞記事の見出しになっていたりします。

しかし、新型コロナウィルスの感染拡大に不安を感じるのは当然でしょうし、この調査は誰のために、何のために実施したのかがよくわかりません。それに、調査結果であれば、なんでも客観性があって信頼できるわけでもありません。

「不安」という定量的に測りづらいものを対象にしているのですから、その分析には何らかの工夫が必要です。漠然と単純集計をして「8割が不安に感じている」という結果の発表には、不安を煽る以外の目的が見当たりませんし、「それで?」としか言いようありません。何故ならば、この結果から、何かの行動や対策を生み出すことはできないからです。

中には、一歩踏み込んで、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、どのような点に不安を感じるかを聞いている新聞社もありました。職場、通勤、会食、家庭などのどこでの感染が不安かを聞いているものなどです。もちろん、このように、直接的に設問として聞く方法もあります。

しかし、何に不安を感じるのかを直接聞くのではなく、その人を取り巻く状況や生活パターンなどを設問として確認をして、それを分析軸としてクロス集計する方法もあります。 つまり、「不安」という定量的には測りづらい感情・気持ちを、行動という客観的な事実を分析軸にしてクロス集計するわけです。

例えば、
【通勤について】
・週に何日出勤しているのか?
・出勤に電車やバスの交通機関を利用しているのか?
・公共交通機関を利用している場合、その利用時間はどれくらいか?(10分刻みくらいで)

【職場について】
・職場での会議の頻度は?
・職場で社外の人と接触する頻度は?
・社内での三密(密集、密接、密閉)の度合は?

【家族構成について】
・一人暮らしなのか?
・高齢者と同居しているのか?
・小さな子供と同居しているのか?
・同居家族の人数は?

などを、設問にして確認します。

そして、不安に思う度合を、これらの設問の結果とクロス集計すれば、例えば、「通勤時間の長さに関わらず、高齢者と同居をしている人が最も不安を感じている」などという結果を導き出せるかもしれません。

そして、その結果から、そのセグメントに対しての対策を検討しようとなっていくわけです。

尚、できれば、調査設計の段階で、どの設問とどの設問でクロス集計をするのかを想定しておくことが望ましいです。そして、注意するべきなのは、クロス集計後の各セグメントで分析に堪えられる程度のサンプル数(サンプル数30程度)を確保できるように、調査を設計することです。(もちろん、上手く考えないと設問数もサンプル数も膨らんで調査費用も膨らみますのでご注意を!)

ちなみに、性年代別でクロス集計した結果が新聞などに掲載されている場合がありますが、同じ30代女性でも「働いている女性と、そうでない女性」「独身か既婚か」「親と同居しているかどうか」「子供がいるかどうか」などによって考え方が大きく分かれる場合がありますし、「正社員か、非正規社員か、無職か」「宿泊業・飲食業・販売業・旅行業か、それ以外か」によっても意見が割れる場合もあります。

ですので、単純集計の結果を眺める場合には、その中にどのような人がどれくらい混ざっているのかを想像することが大切ですし、可能であれば、有効な分析軸を見つけ出して、クロス集計をしてください。そして、説得力のある施策立案に活かすことができれば、調査を実施した価値があるというものです。


ここに書いたことは、市場調査、世論調査、マーケティングリサーチなど、調査業として調査結果を集計分析する仕事に従事する方ならば、多くの方に賛同いただけるのではないかと思います。

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