コールセンターのBPOとアウトソーシングの違い|BPOという外来語の意味は?

● コールセンターやマーケティング用語に多い外来語

コールセンターやマーケティングに関する用語の多くは、その概念と一緒にアメリカなどの英語圏から日本へ入ってきます。いわゆる外来語です。ですので、カタカナが多いわけです。

他の一般的な外来語と同様に、コールセンターやマーケティングに関する用語も、日本で広まっている意味合いが本来のものから離れて日本独特の内容に変わってしまっているものもあるようです。その中には、サービス提供事業者が自社のサービスを啓蒙する過程で本来の意味を少し曲解し、それがネット上で広がっていったものもあるのではないでしょうか。

念のために申しておきますと、Googleの検索結果が1位だからと言って、そのページに100%正しいことが書かれているとは限りません。Googleは、そのページの内容を精査しているわけではなく、SEO的に強いページが上位に表示させているだけです。元々、SEO的に強いサイトが新たに「誤った内容を含むページ」を追加したとしたら、そのページが上位に表示されることもあり得ます。

ただし、明らかに世の中の人達が 「それは、おかしいよ!」 ということが書かれていれば、自然と検索順位も下がっていくでしょう。しかし、みんながあまり知らない言葉の意味・定義についは、正しいのか・正しくないのかの判断ができないので、結局、SEO的に強いページが上位に表示されて、みんながそこに書かれていることを正しいと信じてしまいます。そして、そこに書かれたものが本来の意味と違ったとしても、日本国中にその内容が広がっていくと想像されます。

例えば テレマーケティング、インサイドセールス、テレアポ、インソーシングなどがそれにあたると考えられますが、ここではBPOについてのみ述べることにします。

● Business Process Outsourcing

BPO が、Business Process Outsourcing (ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の略であることは間違いありませんが、 日本では、「アウトソーシング」と「BPO」との違いとして、次のような説明を目にします。

アウトソーシングとは、単に人手不足の際に人手を補うために外部委託すること。BPOは業務の設計を含めて外注するので業務の効率化が図れる。そのプロによる業務の設計によって業務が改善・効率化されることがBPOの最大の価値である、と。

でも、素朴な疑問として、元々、BPOとは どういう意味なのでしょうか?

それでは、BPOの発祥であるアメリカのサイトを見てみましょう。
アメリカの会計・給与システムを提供する会社のサイトには、こう書かれています。
https://www.sage.com/en-us/blog/glossary/bpo-business-process-outsourcing/

■ ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)とは、社外の事業者によって処理される「標準的なビジネスの機能」を契約すること。
■ 最も一般的に外部委託されている機能は、カスタマーサービス、会計、給与、人事管理。
■ 多くの場合、企業はBPOの実践から利益を得ることができる。給与計算などの専用タスク用に設定された提供サービスでは、より効率的に業務を実行し、それらのコスト削減の恩恵をクライアントは享受することができる。

同様に、アメリカのコールセンター事業者のサイトには、こう書かれています。
https://roicallcentersolutions.com/customerservice/difference-between-outsourcing-and-business-process-outsourcing/

■ アウトソーシングとBPOという2つの言葉は同じような意味で使う場合もある。
■ 特定の業務にBPOという言葉を使うこともある。人事やカスタマーサービスやシッピング(出荷)など。ビジネスの責任と運用を第三者にアウトソーシングすること。

● アウトソーシングとBPOの違い

アウトソーシングとBPOについてまとめると、次のようになります。

■ アウトソーシングとBPOは、全く同じ意味として使われることもある。
■ アウトソーシングのほうが広く使う言葉。BPOは特定の業務に使う言葉。
■ 研究開発、製造、サービス提供などのコアな業務に対して、BPOという言葉は使わない。
■ BPOの対象は、人事・給与・会計などのバックオフィス系と、コールセンターのフロント系の2種類。どちらもコアではない業務であることが共通。
■ BPOという場合には、その業務の責任と運用を外部に任せることになる。しかし、単にアウトソーシングと言う場合でも、運用の全てを任せることもある。
■ BPOは、部門・部署の業務をまるごと切り出して外部に委託するイメージ。

アウトソーシングとBPO

■ 日本でも、会計(経理)・人事・給与計算などの業務においては、業務を丸ごとアウトソーシングすることと、業務の一部を切り出してアウトソーシングすることの違いを明示するためにBPOという言葉を使うことが多い。それは、次のような背景があるから。

・ 企業内に存在する間接部門を、丸ごとアウトソーシングするという新しいビジネスのコンセプトを訴求するために、その概念を伝える必要があった。会計業務の一部、給与計算の一部などを切り出してアウトソーシングするのではなく、経理部を丸ごとアウトソーシングすることでコスト的なメリットがあると訴求したかった。

・ 企業にとっては、従来、自社で対応してきた間接部門業務をわざわざ外部にアウトソーシングすることには抵抗感もあり、特に日本では該当する業務に従事している従業員をどうするのかという問題もある。それでも、アウトソーシングサービスを利用してもらうために、サービス提供事業者は「プロによる業務の設計・改善・見直しによる業務の効率化」を前面に押し出す必要があった。

● コールセンターにおけるアウトソーシングとBPOの違い

コールセンター業務を外注する場合に、コールセンター業務の「アウトソーシング」と「BPO」の違いとは何なのでしょうか?

いくら人手が足りないことが原因で外注することになった(単なるアウトソーシング)としても、コールセンター業務を受託する側は、必ず業務の設計をしますし、場合によってはSLA(サービス・レベル・アグリーメント)を締結します。

ですので、コールセンター業務における「アウトソーシング」と「BPO」の違いは効率化や業務改善ではないかもしれませんし、おそらく、顧客企業も、サービス提供者であるコールセンター事業者も、敢えて「アウトソーシング」ではなく「BPO」という言葉を使うことはあまりないでしょう。

それでも、敢えて、コールセンターにおいてのアウトソーシングとBPOについて述べるとすると、次のようになります。

■ 日本のコールセンター業界では、アウトソーシングとBPOという言葉を使いわけることはあまりしない。その理由は、コールセンター業務をアウトソーシングする際に以下のような状況であるから。

・ アウトソーシングの対象が業務の一部の場合もあれば、全部のこともある。どちらも良くある。
・ 物理的に外部(第三者の建物)で業務を遂行することもあれば、インハウス(自社内)で運用だけを委託する場合もある。
・ BPOやアウトソーシングという呼び名に関わらず、プロとして業務を設計し、センター運営の効率化・最適化を図ることが当然とされている。

■ 結果として、日本国内のコールセンター業務では、アウトソーシングとBPOを使いわけることはあまりしない。

■ 強いて言えば、カスタマーサービスなどの「定常業務を」「常に」「全てを」外注すれば、コールセンターのBPO。
■ 例えば、通販受注において、電話での受注業務を「一時的に」あるいは「一部を」外注すれば、コールセンターのアウトソーシング。前者は広告宣伝時の大量のコールを捌くために外注する場合、後者は定常的にあふれたコール(あふれ呼)のみを外注する場合。

■ アメリカでは、コールセンター業務(カスタマーサービス)の全てをインドやフィリピンなどの海外(英語圏で人件費が安い国)へ外部委託するという大きな変化を表すための言葉として、BPOという言葉を使う意味合いがある。(ちなみに、その揺り戻しの国内回帰の現象として「インソーシング」という言葉がある。)


このように見ると、日本国内で閉じているコールセンター業務に関しては、わざわざBPOという言葉を持ち出す必要はないのかもしれません。日本では、結局、「丸ごと」「一括」「思い切って」なのか、「部分的に」「一部を切り出して」「必要に応じて」なのかを頭につけて、「外注する」と言ったほうが、発注する側も受注する側も理解ができるのではないでしょうか。

もちろん、言葉の意味は時代の流れとともに変わっていくものですので、将来、違う意味合いになっている可能性もありますし、上に書いたものは整理の仕方の一例としてお考えください。

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