ネオ自治体の世界|コールセンターの可能性

コールセンターは、どんな可能性を秘めているのでしょうか? そして、未来はどんなコールセンターを必要としているのでしょうか? 急速にデジタル化&リモート化が進み、多様な業種・職種が姿を変える社会では、どのような未来がやって来て、そのときコールセンターにはどのような役割が求められるのかを予想するコラム。第5回のテーマは「ネオ自治体の世界」です。

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自治体サービスの大変なところは、広くあまねく公平にサービスを提供する必要があることです。多くの民間企業の場合、費用対効果が見合わないところには手を出さないで済みますが、自治体はそうはいきません。性別・年齢・収入・健康状態などによってサービスの提供に不平等が生じないように求められます。

しかし、時代が進んで自治体に求められる役割は増え続けますが、人口減少の時代に多くの税収を期待することはできません。そこで、自治体では、サービスレベルを維持しながら、コスト削減を進めるという難しい舵取りが必要です。つまり、自治体でも生産性の向上に取り組まざるを得ません。

そこで、必然的に、自治体も「デジタル化」や「リモート化」と向き合うことになります。自治体のIT化は遅れ気味ですが、デジタル化やリモート化なしでは自治体サービスの維持は難しくなるでしょう。

既に、いくつかの取組みは始まっています。

自治体のサービスの1つとして、ゴミの回収業務があります。自治体によって、燃えるゴミ・燃えないゴミ(缶・瓶・プラスチックなど)・新聞紙・段ボールなど、ゴミの分別方法は異なりますし、それぞれのゴミの回収日も違います。

そのゴミに関する情報をスマホアプリで提供するサービスが自治体で流行っています。その「ゴミ分別アプリ」では、ゴミの出し方や回収日をスマホで住民に掲示することができ、ゴミに関する「お知らせ」をプッシュ通知することもできます。

「ゴミ分別アプリ」の利用料は月額数万円程度で窓口業務を担う担当者の人件費と比べると費用対効果が高いですし、ゴミの分別方法を住民に知らせる紙媒体(冊子など)を減らすこともできます。

ただし、ゴミ分別アプリほどに導入が進む自治体アプリは、あまり他には存在しません。

それは、住民にとってのメリットが少ない、つまり住民から見た「手間」対「効果」の結果だと想定されます。自治体が提供するサービスは幅広く、そのそれぞれに対してスマホにアプリをインストールするわけにもいきません。そのため、スマホアプリ(デジタル化の1つ)で解決できる領域には限界があります。

しかし、そのスマホアプリで対応できない領域に対しても、自治体は生産性を向上させなければなりません。その解決策の1つが自治体のコールセンター(コンタクトセンター)の運営です。

住民との電話対応はコールセンターに集約し、各部署はそれ以外の業務に専念してもらいます。もちろん、最終的に各部署に電話が繋がることもありますが、部署に繋がる電話の数が減れば、部署の生産性は必ず上がります。電話対応をした後、「あれっ?何やってたっけ?」と思う経験は誰にでもあると思います。特に作業系業務の中断は、著しく生産性を低下させます。

しかし、各部署で対応していた住民との電話のやりとりを1か所に集約してコールセンターを設置することは、自治体にとって勇気のいることかもしれません。サービスレベルが低下するのではないか、業務が回らなくなるのではないか、二重投資になるのではいか。不安はつきないことでしょう。

それでも、いくつかの自治体では既にコールセンター・コンタクトセンターを運営しています。コールセンターの設置に躊躇する場合は、既にコールセンターを運営している自治体に現状をヒアリングされては如何でしょうか。

電話業務を集約すれば、規模の経済が働きます。新しい技術の導入のハードルも下がります。 電話対応のプロに業務を委託することも可能です。

デジタル化とリモート化。人口減少が進む未来の自治体には、その両方が不可欠です。そして、ネオ自治体へと変貌を遂げた自治体の住民には幸せな日常が待っていることでしょう。