通販会社が福岡に多い理由 ~ 九州の農業から考える健康食品の存在 ~

福岡市

九州、特に福岡と言えば、健康食品や化粧品の通信販売で有名な企業が多く立地している印象を持ちます。敢えて、名前は出しませんが、九州の会社だと知らなくても、会社名や商品名は知っている。そんなテレビコマーシャルや新聞広告などで有名になった通販会社が福岡にはいくつもあります。

● どうして、福岡?

さて、その福岡など九州に通販企業が多い理由は、何なのでしょうか? とりあえずネットで、調べてみると、いくつかの説が見つかります。

■ 辛子明太子の某社が起源
■ 福岡が通販事業にマッチした都市だから
 (輸入コストが安い、人口150万人都市なのに家賃や人件費が安いなど)
■ 九州の役所は薬事法の扱いが緩いから(本当かどうかはわかりません!)
■ 九州は自然環境が豊かで、ケールや酢、海産物など健康食品に適した食材が豊富だから

など。

辛子明太子屋さんが通販の元祖でそのノウハウを周りの人達に教えてあげたという話は、いくつかのサイトに記載されています。その話はさておき、福岡の通販コンサル会社が賑わっていることは確かですし、福岡で通販のノウハウが共有されているのは間違いないでしょう。

しかし、そもそも、どうして、九州の人達は通販事業に力を注ぐ必要があったのでしょうか?

「九州は自然環境が豊かで、ケールや酢、海産物など健康食品に適した食材が豊富だから」 というネット上の記載が気になりますが、北海道だって、長野だって、自然が豊かで農産物もたくさんあるはずです。どうして、福岡などの九州では通販が盛んになったのでしょうか?

そのヒントは、九州の農業事情ににあるかもしれません。

● 九州の農業が抱える問題

まずは、表1をご覧ください。<作物統計調査(2019年)を基に当社にて作成>
カレーやシチューなどに使う、ばれいしょ(じゃがいも)・たまねぎ・にんじん。それらの国内での出荷量の多くは北海道が占めています。逆に、九州のシェアは高くありません。 北海道で大量に栽培できる野菜の場合には、規模の経済がはたらいて、九州を含む他の地域に勝ち目がないのかもしれません。

野菜の出荷量(県別シェア)

次に、表2をご覧ください。はくさい・ほうれんそう・こまつな などの葉物野菜は、茨城県や千葉県などの関東地域での生産量が多くなっています。東京を含む首都圏での消費が多く、葉物野菜は新鮮さが大切ですから東京近郊で栽培されたものが好まれるからでしょう。さらに、物流コストの問題を忘れるわけにはいきません。はくさいのような単価が安い野菜を、わざわざ遠くから飛行機で空輸するよりも、東京近郊からトラックで運ぶほうがコスト的に競争優位であることは言うまでもありません。

野菜の出荷量(県別シェア)

表3は、だいこんとブロッコリーの県別のシェアです。 だいこんもブロッコリーも、馴染みの野菜です。それだけに、日本全国で栽培されているようです。ただし、だいこんも、ブロッコリーも重い野菜なので、より運搬コストがかかるはずです。だから、近場で栽培して近場で消費する、いわゆる地産地消の野菜となっています。

野菜の出荷量(県別シェア)

表4は、キャベツ・トマト・レタス・きゅうり・ねぎ・なすなど。 これらは、消費量の多い野菜ですが、やはり、関東の出荷量が多いです。ただし、トマトは熊本が20%のシェアを獲得しいて健闘しています。トマトは、生食だけではなく、トマトジュース・缶詰・ケチャップなどの加工品としての需要があるからではないかと推測します。実は、ここに大きなヒントが隠れています。

野菜の出荷量(県別シェア)

● あなたなら、どうしますか?

九州には土地もあるし、水もある。気候も良いです。しかし、野菜を栽培しても、九州の中には大きなマーケット(市場)がありません。だからと言って、首都圏をターゲットにしても、東京近郊の農家には勝てません。

さて、もし、あなたが九州の野菜農家だったら、何を考えるでしょうか?

牛肉・豚肉・鶏肉の酪農に転身することも1つのアイデアでしょう。野菜ほど鮮度を気にする必要がないし、単価(付加価値)も高い。しかし、酪農には酪農のノウハウや投資が必要です。しかも、鮮度を気にする必要がないということは、逆に輸入品と競争する状況に陥ります。だから、酪農家に転身することは考えずに、野菜農家として生き残ることを考えてみてください。

そこで、考えることは2つあります。

ケール

1つめは、日本にはない魅力的な野菜を外国から持ち込んで栽培してみてはどうだろうか? というアプローチです。ブロッコリーだって、以前は日本人には馴染みのない野菜でしたが、その栄養価の高さもあって、あっという間に日本中に広がりました。

だったら、もっと栄養価の高い野菜、ビタミンやミネラルの豊富な野菜はないだろうか? そんな思いで日本に持ち込まれたのが、ケールなどの野菜です。しかし、栄養価の高い野菜に限って、えぐみがあったりして、はっきり言って美味しくなかったりします。

しかも、カレーとシチューと鍋物とみそ汁とサラダ。あなたは、今以上に野菜を食べることができるでしょうか? そして、そもそも九州の近場に販売先がないことが大きな問題なのであって、その問題は何も解決されていません。販売先があってはじめて、差別化が生きるはずです。


それならばと、2つめに考えることは、農業の6次産業化です。 6次産業化は、以前から農業の世界で、よく耳にする言葉です。農業は1次産業。そして、製造業である2次産業、サービス業の3次産業と組み合わせて農業ビジネスを発展させようというものです。 6次産業化のセミナーでは、必ず、1+2+3=6、1×2×3=6 というキャッチフレーズが出てきます。

6次産業化とは、1次産業としての農業だけでは儲けが少ないし差別化も難しいので、自ら農産物を加工して(製造業:2次産業)、販売する(販売業:3次産業)。あるいは、自らレストランを経営(飲食業:3次産業)して、食材として農作物を利用することを考えて実践しましょう、というガイドラインのようなものです。

イチゴ農家がイチゴをジャムにして瓶詰めして販売する、ぶどう農家がワインを醸造して販売する。そんなイメージです。

ただし、首都圏であれば、観光農園や農家直営のレストランなどで成功する可能性もありますが、人口の少ない九州では他の方法を考えなければなりません。

● 九州の農業が抱える問題、その解決策としての健康食品

青汁

実は、その6次産業化の考えに沿って、九州の農業が抱える課題を解決してくれたのが健康食品の通販事業なのではないでしょうか。粉末状の青汁は、軽くてかさばらないので物流コストを抑えられるし、生野菜と違って賞味期限も長い。商品単価も上がるし、在庫も可能。東京はもちろん、日本のどこでもターゲットにできます。

そもそも、好きで野菜を食べている人ばかりではありません。別に好きではないけれど、健康のために野菜を食べている人も多いはずです。それならば、別に野菜のままの形でなくても良いのではないか? その機能性を訴求すれば良いのではないか?

だから、「う~ん、まずい!」のテレビコマーシャルがハマったのではないでしょうか。 そして、首都圏に限らず、日本中を商圏にすることで大成功したわけです。


当社は、大阪と福岡に自社コールセンターを所有して運営しています。福岡は通販事業での需要(受注代行など)にお応えするためのアウトソーシング用のコールセンターです。 福岡でコールセンターをお探しの際には、是非、当社にお声がけください。

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